「国は守ると言うが...」 海洋放出、鮮魚店「これから」に水差す

2021年04月09日 08時55分 福島民友 WEB

210409news3.jpg東京電力福島第1原発の処理水を巡り、菅義偉首相と漁業者団体トップの会談から一夜明けた8日、会談の波紋は、漁業関係者だけでなく県内の市場関係者や消費者にも広がった。海洋放出を目指す政府方針に、関係者からは「影響は市場にも出る。幅広く対策を図ってほしい」との声が上がる。

 「買わない、店を訪れてくれないなど影響は如実に出る。風評は流通、販売の現場を直撃する」。いわき市久之浜地区で鮮魚店「おさかなひろば『はま水』」を経営する合同会社はまからの専務阿部峻久さん(38)は、海洋放出が行われた場合の影響を懸念し、市場関係者への対策を求める。

店では「常磐もの」にこだわり、常磐沖で取れた魚介類のほかアナゴのみりん干しなど加工品も販売。地元や首都圏の飲食店などに商品を卸してきた。

 試験操業では抑えられていた漁獲量が4月からの移行に向けた操業で増えることに期待していただけに、阿部さんは「売る自信はある。(海洋放出は)これからという動きに水を差すことになる」と不安視する。

 同社では子どもの漁業体験など人材育成にも携わってきた。「状況が悪くなるのに関わりたいという人なんていない。国は水産業を守ると言いながら、実際どう考えているのか」と疑問を口にする。

相馬復興市民市場「浜の駅 松川浦」内で食堂「浜の台所 くぁせっと」を運営する会社・そうま海拓丸代表の管野貴拓さん(45)は、「ちょっとやめてくれよという思いしかない」と率直に考えを語る。

 浜の駅は昨年10月に開場。にぎわう店内の様子に「震災前の相馬に少しずつ戻りつつある」との思いを抱いていた。そんな中での処理水を巡る動きに、大きく落胆する。

 ホテルなど宿泊施設や飲食店が多い郡山市では、新型コロナウイルスの影響で鮮魚の仲卸業が大きな影響を受けている。同市総合地方卸売市場で取引する業者は、処理水が海洋放出された場合に「風評とコロナでダブルパンチになるのでは」と警戒感を強める。

同市場に入る業者でつくる市場組合の鈴木茂雄事務局長は「東日本大震災から10年たっても、いまも根強い風評はある。政府には慎重に考えてもらいたい」とくぎを刺した。