福島原発処理水 処分方法の決定先送りできぬ

2019/12/29 05:00 読売新聞社説 WEB

brg181119a.gif福島第一原子力発電所の廃炉を進めるうえで、原発事故に伴って生じ続ける汚染水の扱いは最大の課題である。
 現在、汚染水を浄化した処理水約110万トンが福島第一の敷地内の1000基近いタンクで貯蔵されている。
 この処理水の処分法を議論してきた経済産業省の有識者会議が、海洋や大気への放出に絞る報告書案を示した。今後、政府の最終決定のたたき台になるものだ。
 放射線や環境問題の専門家で構成する有識者会議では、地下深くに埋設したり、電気分解したりする選択肢も検討した。ただ、海洋や大気への放出と異なり、いずれも過去に例のない複雑な方法で、多額の費用が見込まれる。
 候補から外れたのは、このような難点が多いためだろう。

報告書案の海洋放出は、微量のトリチウムが残る処理水を、国の基準を下回る濃度まで海水で希釈して海に流す方法だ。
 トリチウムは自然界に存在し、放射線は弱い。経産省の推計では、仮に1年間ですべての処理水を海に流しても、沿岸住民の被曝
ひばく
線量は、自然界で1年間に浴びる線量をはるかに下回る。世界中の原子力施設からも排出されている。

 安全の確保を前提にすれば、現実的な処分方法と言えよう。
 問題は、風評被害の発生が予想されることだ。地元の漁業関係者らの懸念は大きい。

海洋放出を実施する場合には、風評被害を防ぐ対策を講じることが大切だ。放出した海でとれる海産物を食べても人体に影響がないことを、政府は消費者に繰り返し丁寧に伝える必要がある。
 諸外国が輸入制限などの不合理な措置をとらないよう、説明を尽くす努力も求められる。
 一方、大気放出は、高温で処理水を蒸発させ、上空に流す。大気中で国の基準を下回るようにするものの、天候に左右され、安定して放出するのが難しい。
 海洋放出と違い、漁業だけでなく農業や観光産業にも風評被害が及ぶ恐れがある。

政府は福島第一の廃炉工程表を改訂し、まずは2号機の溶融燃料の取り出しに着手する。
 取り出した燃料は当面、敷地内で保管する見通しだ。処理水のタンクが敷地を占領していては、作業の足かせとなりかねない。
 処理水のタンクを増設しても2022年には満杯になって、貯蔵量が限界に達するとの試算もある。政府は先送りせず、処分方法の決定に向き合うべきだ。