東京電力福島第一原発事故 生業訴訟、津波予見など争点 30日、初の高裁判決

2020/09/29 09:43 福島民報 WEB

20200929-00000014-fminpo-000-1-view.jpg東京電力福島第一原発事故の被災者約三千八百三十人が国と東電に慰謝料や居住地の放射線量低減を求めた生業(なりわい)訴訟の控訴審判決は三十日、仙台高裁で言い渡される。全国で約三十ある同種訴訟のうち、国の責任を高裁が判断するのは初めて。国の責任を巡る各地裁の判決が分かれる中、高裁の示す結論に注目が集まる。

控訴審の主な争点は【表】の通り。(1)国と東電は第一原発に襲来する大津波を予見できたか(2)建屋の水密化などで事故を防げたか(3)国の中間指針に基づく賠償が妥当か-などが争われている。原告は一人当たり月額五万円の慰謝料を求めており、事故が起きた二〇一一(平成二十三)年三月から控訴審が結審した今年二月までの総額は約二百十五億円に上る。原告団約三千八百三十人は同種訴訟で最も多い。

同種訴訟のうち、国を被告に含めた十三件で地裁判決が出ており、国に賠償を命じたのは七件と判断が分かれた。残りの六件は大津波は予見できたとしつつ、対策工事をしても事故は防げなかったなどとして国の責任を認めていない。

 二〇一七年十月の一審福島地裁判決は、二〇〇二年七月に公表された政府の地震予測「長期評価」に基づけば、国と東電は大津波を予見できたと判断。対策工事で事故は防げたとし、原告約二千九百人に対して総額約五億円を支払うよう両者に命じた。ふるさと喪失慰謝料や原状回復は認めなかった。

 控訴審で住民側は賠償の増額や原状回復を改めて請求。国は「地震は予見できず、事故も防げなかった」、東電は「国の指針に従い十分に賠償した」と反論した。

■被害実情しっかり見て 原告団長 中島孝さん(相馬)

 原告団長の中島孝さん(64)=相馬市=は三十日に迫った控訴審判決を前に、「被害の実情をしっかりと見てほしい」と訴えた。

 一審も含めるとこれまで四度、意見陳述で法廷に立った。今年二月に仙台高裁で迎えた最終意見陳述で裁判官に問い掛けた。「明るい見通しを持って生活を営むことは私たちの喜びです。原発事故でそれが長期にわたり断ち切られた時、人はどう生きることができるでしょうか」

相馬市でスーパーを営み、地場の魚介や野菜を扱っているが「震災前ほどの活気はないね」とうなだれる。避難の有無にかかわらず、多くの人が被害を受けたと思っている。国が過失を認めず、東電も中間指針に沿った定型的な賠償に終始していることに憤りを感じる。

 原発事故から十年目に出される判決。「この判決が原発政策と中間指針を問い直す一つのステップになるはず」。そう信じて判決を待つ。