福島第1原発処理水 風評被害を拡大させない対策を

2020年2月3日(月)愛媛新聞 WEB

8.jpg東京電力福島第1原発で増え続ける処理水の処分方法などを議論していた政府小委員会が、提言案を大筋で了承した。検討した五つの処分方法のうち、海洋と大気への放出を「現実的な選択肢」とし、さらに海洋放出の方を「確実に実施できる」と強調した内容となっている。
 福島の復興を進める上で、処理水の処分に早く道筋をつけることは重要だ。しかし、放出による風評被害に対して漁業関係者らの反発や不安は根強い。政府は小委が今後まとめる報告書を基に方針を決めるが、関係者の理解が大前提であり、拙速な判断は避けねばならない。

議論に3年余りをかけた小委では、地層注入、水素放出、地下埋設を含めた五つの処分方法を検討。国内外で前例があるとして海洋と大気に絞り込んだ上で、海洋の方が大気放出と比べ希釈や拡散の状況が予測しやすく、監視体制の構築が容易と評価した。
 処理水には、浄化設備で除去できない放射性物質トリチウムが含まれている。トリチウムは人体への影響が小さいとされ、これまでも四国電力伊方原発など通常の原発から法令で定めた数値内で放出されている。
 ただ、だからといって炉心溶融事故を起こした福島第1原発と、ほかの原発を同一視して判断することはできない。

福島第1原発では、2018年に浄化済みとされていた他の放射性物質が処理水に残留していることが発覚。昨夏には処理水保管タンクの一部で泥状の沈殿物が堆積しているのが判明した。にもかかわらず、東電は小委にこれらの事実を積極的に報告せず、重要な論点が置き去りにされた。東電の情報公開に対する姿勢や現場管理能力にも不安が残ったままだ。

 提言案を受け、地元の漁業関係者らからは反発の声が上がっている。福島県沖では12年に海域と魚種を絞った試験操業を始め、徐々に事故前の姿を取り戻しつつある。仮に海洋放出が始まれば、再び風評被害が拡大する懸念は強い。漁業者にとって死活問題であることは察するに余りある。

小委でも風評被害への危機感を共有し、提言案には周辺環境のモニタリングと食品検査を組み合わせた分析体制を構築するといった対策を強化すべきだと盛り込んだ。関係者から放出への理解を得るには政府や東電が実効性ある風評被害対策を示すことが欠かせない。その上で、納得が得られるまで丁寧に説明を重ねる必要がある。

 処理水のタンクは22年夏ごろに容量が満杯になると試算されている。政府は廃炉を30~40年で終える目標期間内に処分を完了させるべきだと主張するが、廃炉作業は工程遅れを繰り返しており、計画通り進む保証はない。政府と東電はスピードだけにこだわらず、透明性を確保して着実に工程を進めていくことが、国民の信頼醸成につながると認識しておくべきだ。